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別離の支度
息を引き取った父を
霊柩車に乗せるための支度。
看護師さんが声を掛けてくれた。
『イヤでなければ一緒に…』
私は即答した。
『よろしく お願いします』
素人の私が手を出すと言うことは
恐らく足手纏いだと思ったけれど
私は父の身体を丁寧に拭き、
そして浴衣に着替えさせた。
看護師さんに言われた。
彼女は泣いてくれていた。
『本当に幸せな最期でしたね』
涙を流しながら言ってくれた。
私も堪え切れずに泣いた。
でも、その後の通夜や告別式では
私は涙が出なかった。
看取ったという実感を感じていたから。
でも母と兄は、泣きじゃくっていた。
父の病が分かった時
『延命処置はしないで下さい』
そう私は言い切った。
必要以上に苦しませたくなかった。
その私に兄は言った。
『お前は親父を見殺しにするのか』
と。
でも生きるのと生かされていると言うことは
まったく別のモノだ。
きっと、どちらを選んだとしても
正論なんてありえない。
でも私は、選んだ。
そして父は、安らかに息を引き取った。
後悔はない。
だけれども今になって涙が溢れる。
父は、もういない…